労災保険と雇用保険

労災保険とは、労働者が仕事上でのけがや病気、死亡(業務災害)したり、通勤途中での事故によるけが(通勤災害)などに国が事業主に代わって必要な給付を行う保険です。
保険料は全額会社が負担します。
事業主が保険料を納付していなくても、労働者は労働基準監督署(リンク集)で手続きをすれば給付を受けられます。
つまり、労災にあたるかどうかは労働基準監督署長が判断するのであって、会社が決めることではありません。
治療にかかる費用は、労災保険から支給されます。
また休業補償として働けなかった日数分の給料の約8割が支給されます。
ただし、働けなくなった日から4日目以降の休業が対象で、最初の3日間の休業については、会社が平均賃金の6割以上を補償することになっています。
労災保険による給付を受ける権利は原則として、治療を受けた日や休んだ日から2年間(後遺障害や死亡の場合は5年間となる場合もあり)以内に申請しないと時効となります。

雇用保険は会社や労働者の意思にかかわらず、1週間の所定労働時間が20時間以上であって、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合には、原則として雇用保険に入ることになります。
雇用保険に入っているとハローワーク(リンク集)で手続きすることで、「失業給付」「育児休業給付」「介護休業給付」「教育訓練給付」などが支給されます。
「失業給付」の手続きは勤めていた会社が行うのではなく本人が行います。
「失業給付」の要件は以下になります。

・ ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があって、いつでも就職できる能力があるが、本人やハローワークの努力によっても就職できない「失業」の状態にあること。

・ 離職前の2年間に、11日以上働いた月が12か月(会社側の理由により離職した場合、会社側の都合、またはやむを得ない理由での契約の更新がなされなかった場合は、離職前1年間に11日以上働いた6か月)以上あること。

以上の要件を満たせば、およそ給料の5割~8割が支給されます。
支給される期間は、被保険者期間、年齢、離職理由、障害の有無などにより異なり、90日~360日となります。

解雇について

「解雇」とは、使用者が労働者との間の契約関係を一方的に打ち切ることですが、労働者を解雇するには客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である必要があります。
合理的な理由とは労働者が重大な業務命令違反や職場規律違反をしたり、心身の故障などによって働けなくなった(業務災害を除く)場合です。
しかし就業規則に解雇事由が記載してあっても、解雇権を濫用すれば無効となります。
以下は法律によって定められた不当解雇事由です。

労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
労働者が業務上災害によって負傷したり、疾病にかかり療養のために休業する期間と、その30日間及び産前産後の女性が休業する期間と、その後30日間。
労働者が行政官庁又は労働基準監督官に申告したことを理由とする解雇
労働者が労働組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇
労働者が労働委員会への申立等をしたことを理由とする解雇
労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚、妊娠、出産、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇
労働者が育児・介護休業を申し出たこと、又は育児・介護休業をしたことを理由とする解雇
公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇

その他、

事実に反する理由や本人に責任のない理由による解雇
些細なミスや能力不足を理由とする解雇や、その改善のための猶予や措置をとらなかった解雇

についても無効とされています。

会社の経営悪化によって人を減らさなければならない場合の解雇でも、一定の条件が必要になります。(整理解雇)
辞めさせられる理由がない、あるいは辞める気がないならば、そのことを使用者に伝え、撤回を求めて下さい。
それでも解決できない場合は各都道府県の労働相談センター(リンク集)などに相談してみましょう。

社会保険料(週払い)の算出

社会保険料には健康保険、厚生年金保険、雇用保険が含まれます。
健康保険と厚生年金保険は「標準報酬月額」を使って算出します。
表(協会けんぽ版・東京都)を参考にして当てはまる等級から支払額を割り出します。
「標準報酬月額」とは、4月・5月・6月に支払われた給与(総支給額であって控除後の支給額ではありません)の平均から割り出します。
ただし勤務日数が17日に満たない月は除きます。
この標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月まで使用されます。
また報酬月額が大きく変動し、2等級以上の差が生じたときには標準報酬月額は改定されます。



4月の支給額250,000円(勤務日数25日)
5月の支給額160,000円(勤務日数16日)
6月の支給額260,000円(勤務日数26日)

4月の支給額+6月の支給額÷2=255,000円

255,000円が報酬月額となり標準報酬月額は260,000円と判ります。
40歳から64歳の場合は介護保険第2号被保険者ですので、健康保険料の折半額は14,911円となります。
厚生年金保険料の折半額は23,790円です。

雇用保険料は一般事業の場合の労働者負担は3/1,000です。
これは毎月の支給額から算出します。

4月の支給額×0.003=750円
5月の支給額×0.003=480円
6月の支給額×0.003=780円

では週払いの給与の場合はどうなるのでしょう。
健康保険や厚生年金は月額で翌月に控除するのが原則です。
上の例で計算します。

9月の支払額(健康保険料14,911円+厚生年金保険料23,790=38,701円)は翌月の10月に控除されます。
10月の給与支払日が4日の場合は

38,701円÷4=9675.25円が給与支払日ごとに控除されることになります。

雇用保険料は支給額ごとに算出するので

1週間分の支給額×0.003

を事業者が4週間分をまとめて月額として支払います。