熱中症対策として

「熱中症」とは、暑さによって生じる障害の総称で、「熱失神」「熱疲労」「熱けいれん」「熱射病」などの病型があります。
熱中症事故は、急に暑くなったときに多く発生し、気温が高い時ほど、また同じ気温でも湿度が高い時ほど、熱中症の危険度は高くなります。
7日間以上かけて、暑さへの暴露時間を次第に長くしていく暑熱順化期間(暑さに慣れるための期間)が必要なのです。

体調が悪いと体温調節能力も低下し、熱中症につながります。
「疲労」「睡眠不足」「発熱」「かぜ」「下痢」など、体調の悪いときには無理をしないことです。
「体力の低い人」「肥満の人」「暑さに慣れていない人」「熱中症を起こしたことがある人」などは特に暑さに弱いので注意が必要です。

暑いときには、こまめに水分を補給します。
通常、人の1日の水分出納は約2.5L(尿:約1,500ml、呼気や皮膚から失われる水分:約900ml、便:約100ml)です。
胃に水を入れて2030分くらいで、水は小腸に流れ込んで小腸から吸収されます。
2030分ごとには、状況に応じた水分量を補給するとよいでしょう。
水分補給として一度に大量の水を摂取すると、かえって体内の電解質バランスを崩して体調不良を引き起こすので注意して下さい。
水分補給量の目安として、体重減少が2%を越えないように補給します(体重60kgの人の場合は58.8kgを下回らないようにする)
汗からは水分と同時に塩分も失われます。
0.10.2%程度の塩分を補給するとよいでしょう。
0.10.2%の塩分とは、市販の飲料の成分表示では、「ナトリウムが4080mg(100ml)」と表示されています。
加えて、1時間以上の運動をする場合には48%程度の糖分を含んだものが疲労の予防に役立ちます。
自分で調製するには1リットルの水に、ティースプーン半分の食塩(2g)と角砂糖を好みに応じて数個溶かして作ることもできます。
スポーツドリンクにはバランスよく電解質(イオン)が含まれています。
主な電解質には、ナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあります。
スポーツドリンクは、体内から失われた電解質を手軽に補給することができます。

熱中症が疑われるような症状が見られた場合、まず、重症な病型である「熱射病」かどうかを判断する必要があります。
熱射病の特徴は高体温と意識障害であり「応答が鈍い」「言動がおかしい」など少しでも意識障害がみられる場合には熱射病を疑い、救急車を要請し、涼しい所に運び、速やかに身体冷却を行います。
現場で可能な方法を組み合わせて冷却を開始し、救急隊の到着を待ちます。
応急処置としては氷やアイスパックなどを「首」「腋の下」「脚の付け根」など太い血管に当てて冷やすのがよいでしょう。
意識が正常な場合には涼しい場所に移し、衣服をゆるめて寝かせ、スポーツドリンクなどで水分と塩分の補給を行います。
また、うちわなどで扇ぐのもよいでしょう。
吐き気などで水分が補給できない場合には、医療機関へ搬送し、点滴などの治療が必要です。
大量に汗をかいたにもかかわらず、水だけしか補給していない状況で、「熱けいれん」が疑われる場合には、スポーツドリンクに塩を足したものや、生理食塩水(0.9%食塩水)など濃い目の食塩水で水分と塩分を補給します。
このような処置をしても症状が改善しない場合には、医療機関に搬送します。
熱中症の症状が改善しても、少なくとも翌日までは経過観察が必要です。

最近ではドラッグストアなどで「経口補水液」を手軽に入手することができます。
経口補水液は「飲む点滴」として、その効果が認知されています。
正常時に飲むものではありませんが、熱中症時の対応策として携行しておくと非常に心強いものです。
携行に便利なミニボトル、そしゃく・えん下が困難な場合のゼリータイプ、水に溶かすパウダータイプなどがあります。

熱中症対策に過信は禁物です。
正確な知識と的確かつ迅速な対応が必要なのです。

※糖尿病、高血圧、その他既往症のある方は必ず主治医の指示に従って下さい。

労働審判とは

労働問題の解決方法として、労働組合や労働基準監督署に相談する方法がありますが、弁護士に相談する方法もその一つです。
裁判と聞くとハードルが高く感じますが、比較的新しい制度で労働審判というものがあります。
個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を,裁判所において,原則として3回以内の期日で,迅速,適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度で,平成184月に始まりました。
労働審判に対する異議申立てがあれば訴訟に移行しますが、審理に要する期間は平均で約2か月半と、調停が成立して事件が終了する場合が多いようです。
期間が短ければ費用も低く抑えることができますが、複雑な案件になれば短期間に解決することは難しく、弁護士の判断によっては最初から民事裁判を薦められることもあります。
労働審判手続においては,原則として3回以内の期日で審理が終了になるため,当事者は,期日に向けて,しっかりと主張,立証の準備をする必要があります。
具体的には、雇用契約書・就業規則・給与明細・タイムカード・勤怠表・解雇通知書等、その事実が客観的に判断できるものが必要です。
この様な証拠はあればある程無駄になることはありません。
職場での違和感を少しでも感じているのであれば、電子メールや電話の録音、会話の録音、詳細なメモなど、普段から証拠を保存しておくことが大切です。
特に文書関係は、事が起こってからだと会社に請求しても発行してもらえない場合があったり、改ざんされる場合があります。
何気ない文書でも見過ごさず、保存する、記録する(写真やメモ等)ことが必要です。
民事裁判に移行した際にも、これらの資料は重要な証拠になる場合があります。
申立書は、これらの資料を基に弁護士が作成し裁判所に提出します。
資料集めは面倒ではありますが、第三者が客観的に判断するためには最も必要なものなのです。

非正規雇用労働者

平成29年労働組合基礎調査の結果(厚生労働省)によると、雇用者数が増えているにもかかわらず労働組合数、労働組合員数ともに減少しています。
そのうち女性労働組合員数、パートタイム労働組合員数は順調な伸びを示しています。
平成29年の時点で雇用者のうち非正規雇用労働者は約38%。
しかし、多くの労働組合は非正規雇用労働者の加入を認めていません。
これは組合費を納入している正規雇用労働者を守る要素が多分にあります。
非正規雇用労働者から組合費を徴収するとなるとその分給与水準を引き上げなければなりません。
その増額分は会社の負担になる訳ですから、労使交渉がまとまる訳がなく、非正規雇用労働者を除外している労働組合が多いのです。
本来は弱い立場の労働者にこそ、労働組合は必要です。
必要性があり、加入できる環境が整えば労働組合員は増加する、女性労働組合員やパートタイム労働組合員の増加がこれを示しています。
非正規雇用労働者は組織化が難しい雇用形態です。
近年では個人でも加入できるユニオン(合同労組)が、この様な非正規雇用労働者や労働組合が無い会社の労働者の受け皿となっています。

懲戒処分について

会社が懲戒処分をするときは、あらかじめ処分の事由・内容と程度を就業規則や契約に定めておいて、それを労働者に事前に知らせておくことが必要です。
そして、処分はその規定に従って、本人に弁明の機会を与えるなど適正な手続きにのっとって行う必要があります。
さらに、それらの条件を満たす処分でも、不当な目的で行われたり、労働者の行為と比べて処分の内容が重すぎたりすると無効とされます。
会社が改善のための指導や警告をしないまま懲戒解雇することは、社会的な相当性を超えると判断されるということです。
また、懲戒処分として減給を行うことは、労働基準法で上限額が制限されています。
1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が一賃金支払期(月給制なら1か月)における賃金総額の1/10を超えてはならないとされています。
懲戒解雇されてもやむを得ないような場合でも、既に働いた分の給料を不支給とすることはできません。
たとえ事前に決めてあったとしても、没収することはできないのです。
ただし、退職金については、懲戒解雇のときに支給しないことが就業規則などで定めてあって、退職金を不支給とするのに十分な非行が労働者にあった場合には支給しないこともできます。

労働組合の必要性

なぜ労働組合は必要なのか?
個人的に要望を使用者に要求しても、色よい返事をもらえるとは限りません。
労働者と使用者が1対1の関係では使用者の力が強いため、使用者の一方的な決定に甘んじなければなりません。
労働者が団結し、使用者と実質的に対等な立場に立って交渉するために作られたものが労働組合です。
解雇・退職強要、賃金・残業未払い、有給休暇、近年ではセクハラ、パワハラ等、労働者の相談は多岐にわたり急増しています。
会社に相談窓口があっても、適切な対処が期待できず、二の足を踏んでしまうケースも少なくありません。
こうした労働相談の「受け皿」として、労働組合の役割は益々必要とされているのです。

労災保険と雇用保険

労災保険とは、労働者が仕事上でのけがや病気、死亡(業務災害)したり、通勤途中での事故によるけが(通勤災害)などに国が事業主に代わって必要な給付を行う保険です。
保険料は全額会社が負担します。
事業主が保険料を納付していなくても、労働者は労働基準監督署(リンク集)で手続きをすれば給付を受けられます。
つまり、労災にあたるかどうかは労働基準監督署長が判断するのであって、会社が決めることではありません。
治療にかかる費用は、労災保険から支給されます。
また休業補償として働けなかった日数分の給料の約8割が支給されます。
ただし、働けなくなった日から4日目以降の休業が対象で、最初の3日間の休業については、会社が平均賃金の6割以上を補償することになっています。
労災保険による給付を受ける権利は原則として、治療を受けた日や休んだ日から2年間(後遺障害や死亡の場合は5年間となる場合もあり)以内に申請しないと時効となります。

雇用保険は会社や労働者の意思にかかわらず、1週間の所定労働時間が20時間以上であって、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合には、原則として雇用保険に入ることになります。
雇用保険に入っているとハローワーク(リンク集)で手続きすることで、「失業給付」「育児休業給付」「介護休業給付」「教育訓練給付」などが支給されます。
「失業給付」の手続きは勤めていた会社が行うのではなく本人が行います。
「失業給付」の要件は以下になります。

・ ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があって、いつでも就職できる能力があるが、本人やハローワークの努力によっても就職できない「失業」の状態にあること。

・ 離職前の2年間に、11日以上働いた月が12か月(会社側の理由により離職した場合、会社側の都合、またはやむを得ない理由での契約の更新がなされなかった場合は、離職前1年間に11日以上働いた6か月)以上あること。

以上の要件を満たせば、およそ給料の5割~8割が支給されます。
支給される期間は、被保険者期間、年齢、離職理由、障害の有無などにより異なり、90日~360日となります。

解雇について

「解雇」とは、使用者が労働者との間の契約関係を一方的に打ち切ることですが、労働者を解雇するには客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である必要があります。
合理的な理由とは労働者が重大な業務命令違反や職場規律違反をしたり、心身の故障などによって働けなくなった(業務災害を除く)場合です。
しかし就業規則に解雇事由が記載してあっても、解雇権を濫用すれば無効となります。
以下は法律によって定められた不当解雇事由です。

労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
労働者が業務上災害によって負傷したり、疾病にかかり療養のために休業する期間と、その30日間及び産前産後の女性が休業する期間と、その後30日間。
労働者が行政官庁又は労働基準監督官に申告したことを理由とする解雇
労働者が労働組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇
労働者が労働委員会への申立等をしたことを理由とする解雇
労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚、妊娠、出産、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇
労働者が育児・介護休業を申し出たこと、又は育児・介護休業をしたことを理由とする解雇
公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇

その他、

事実に反する理由や本人に責任のない理由による解雇
些細なミスや能力不足を理由とする解雇や、その改善のための猶予や措置をとらなかった解雇

についても無効とされています。

会社の経営悪化によって人を減らさなければならない場合の解雇でも、一定の条件が必要になります。(整理解雇)
辞めさせられる理由がない、あるいは辞める気がないならば、そのことを使用者に伝え、撤回を求めて下さい。
それでも解決できない場合は各都道府県の労働相談センター(リンク集)などに相談してみましょう。

社会保険料(週払い)の算出

社会保険料には健康保険、厚生年金保険、雇用保険が含まれます。
健康保険と厚生年金保険は「標準報酬月額」を使って算出します。
表(協会けんぽ版・東京都)を参考にして当てはまる等級から支払額を割り出します。
「標準報酬月額」とは、4月・5月・6月に支払われた給与(総支給額であって控除後の支給額ではありません)の平均から割り出します。
ただし勤務日数が17日に満たない月は除きます。
この標準報酬月額はその年の9月から翌年の8月まで使用されます。
また報酬月額が大きく変動し、2等級以上の差が生じたときには標準報酬月額は改定されます。



4月の支給額250,000円(勤務日数25日)
5月の支給額160,000円(勤務日数16日)
6月の支給額260,000円(勤務日数26日)

4月の支給額+6月の支給額÷2=255,000円

255,000円が報酬月額となり標準報酬月額は260,000円と判ります。
40歳から64歳の場合は介護保険第2号被保険者ですので、健康保険料の折半額は14,911円となります。
厚生年金保険料の折半額は23,790円です。

雇用保険料は一般事業の場合の労働者負担は3/1,000です。
これは毎月の支給額から算出します。

4月の支給額×0.003=750円
5月の支給額×0.003=480円
6月の支給額×0.003=780円

では週払いの給与の場合はどうなるのでしょう。
健康保険や厚生年金は月額で翌月に控除するのが原則です。
上の例で計算します。

9月の支払額(健康保険料14,911円+厚生年金保険料23,790=38,701円)は翌月の10月に控除されます。
10月の給与支払日が4日の場合は

38,701円÷4=9675.25円が給与支払日ごとに控除されることになります。

雇用保険料は支給額ごとに算出するので

1週間分の支給額×0.003

を事業者が4週間分をまとめて月額として支払います。



給与(週払い)の所得税額

所得税額の算出方法は月額、週額、日額によってそれぞれ変わります。

月額や日額の場合は国税庁の源泉徴収税額表から算出します。

(甲)=「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出者・主たる給与の支払先
(乙)=「給与所得者の扶養控除等申告書」の未提出者・主たる給与の支払先でない
(丙)=日雇い労働者、短期間のアルバイト等

週払いの場合は、源泉徴収税額表(日額表)で確認します。
賃金支払票などから給与計(交通費や保険料を含まない税引き前の賃金の合計額)を確認します。
その額を1週間(7)で割ります。
その額を日額表に照らして所得税額を確認します。
その額に7を掛けた値が週払いの所得税額です。

例 : 給与計が50,000円で甲(扶養0人)

  50,000円÷7=約7,142.8円

  日額表では175円

  175円×7=1,225円

1,225円が週払いの所得税です。

平成28年分 源泉徴収税額表

平成29年分 源泉徴収税額表









労働者の損害賠償責任

労働者に過失があれば、会社が労働者に損害賠償を求めることは違法ではありません。
判例では会社は労働者の働きで利益をあげており、労働者のみに業務上のリスクを負わせることは不公平とする場合が通例です。
労働者の責任の程度、違法性の程度、会社が保険に加入するなど、損害を防止するための措置をとっていたかの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額を算出します。
労働契約等であらかじめ賠償額を決めておくことや、保険の免責金額を労働者の負担とすることは、あらかじめ損害賠償の額を定める契約をしてはならないとする労働基準法に反します。
また、労働者が損害賠償責任を負う場合でも、会社が一方的に賠償額を給料から差し引くことも労働基準法で禁止されています。

休業手当と休業補償

休業手当については労働基準法第26条に規定があります。
勤務予定日に会社の都合で休業することになった場合、会社には平均賃金の60%以上を支払う義務が生じます。
平均賃金とは原則、休業日の前日から遡った3か月間とされています。

直近3か月間に支払われた賃金総額÷直近3か月間の暦日数

直近3か月間に支払われた日給・時間給の賃金総額÷直近3か月間の実労働日数×60%

のどちらか高い方の金額を平均賃金とします。
天災地変その他の不可抗力に対して休業手当の支払い義務はありませんが、天候などは前日に予想可能なので、休日に振り替えたり別業務を命じる等の対応が必要です。
当日の急なキャンセルで代替策がとれない場合には休業手当を支払う義務が生じます。
一方、休業補償とは労災保険における休業補償給付のことです。
業務や通勤でのケガや病気が原因で、仕事ができずに賃金の支払いを受けられない場合の補償です。
労災保険の休業補償は4日目からの支給なので、最初の3日間は会社側に休業手当の支払い義務が生じます。
会社側が医療費を負担して労災保険を使用させない「労災隠し」は労働安全衛生法違反として罰せられます。

変形労働時間制

労働時間の原則は1日8時間、1週40時間です。
しかし、業務量に波がある業種によっては使用者と労働者双方にとって効率が悪い場合があります。
このような場合、労使協定を締結し変形労働時間制を導入することで、効率的な労働時間の管理を行うことができるようになります。
例えば1か月単位の変形労働時間制の場合、暦の日数が28日では160.0時間、29日で165.7時間、30日で171.4時間、31日で177.1時間以内であれば、1週間で48時間(1日8時間×6日)という働き方も可能になります。
この法定労働時間の根拠は

暦の日数÷7日×40時間

の算定式によるもので、この時間を超える労働は変形期間の時間外労働(残業)となります。

36協定

労働基準法では原則1日の労働時間は8時間、1週間で40時間としています。
この法定労働時間を超える労働(残業)をさせる場合に必要になるのが「36協定」です。
「36協定」とは労働基準法36条に基づく労使協定であり、時間外・休日労働に関する協定届けを労働基準監督署長に届け出る必要があります。
36協定で定める延長時間にも限度があり、一般労働者の場合1週間で15時間、1か月で45時間等細かく設定されています。
さらに、この限度を超えて労働させる場合には特別条項付き36協定を結ぶ必要があります。
とはいえ36協定の上限を超えて残業を行う月は1年の半分を超えてはならず、特別な事情が予想される場合に限られ、具体的な理由が必要です。
一般的に1か月に限れば100時間、2か月連続の場合で80時間(1か月内)の「過労死ライン」(厚生労働省通達・脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準)が限度とされています。
ただし、1か月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が5割以上となるため、時間外労働を60時間以内とする企業が増えています。(中小企業においては平成34年4月1日まで猶予されています)

過半数を代表する者とは

労働基準法では事業所に過半数の労働者で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者に協定の締結や就業規則の作成、変更について判断する機会が与えられるとなっています。
労働者の過半数を代表する者は民主的な手続きにより選出されなければなりません。

・管理監督者ではないこと

・労働者に対し、選出の目的を明示して立候補、推薦を募っていること

・労働者に対し、選出の目的を明示して投票、挙手等の方法により選出が行われていること

・同意書の回覧や話し合い等も認められますが、電子メールを利用する場合も含め、その記録を保存しておくこと

電子メールを利用する場合においては、労働者の賛成か反対の明確な意志が必要なので、返信がなければ賛成という方法では、各労働者からの明確な意志表示を記録し保存しておくことができないため不適当と考えられます。
過半数を代表する者の選出は面倒ではありますが、適正に行っておくことが重要なのです。
また、過半数を代表する者への不利益取扱いも禁止されています。

ご存じですか?みなし残業

みなし残業と呼ばれる固定残業代は、人件費の抑制に利用されることがあります。
現行の賃金内に残業代を設定すれば、たとえ残業しても見かけ上の賃金は変わりません。
以下の点もふまえ、よく確認した上で雇用契約を結ぶ必要があります。

・時間外労働に対する割増賃金を定額で支払う場合には、残業を含まない労働時間に対する賃金と残業時間に対する割増賃金とが雇用契約上明確に区別されていなければなりません。

・固定残業代に対する時間を超えて残業した場合には、超過分を支払うことを労働者に明示し、また実労働時間が固定残業時間を含む時間を超えなくても、固定残業代を含む所定の賃金を支払う必要があります。

管理職と管理監督者

労働基準法でいう管理監督者は管理職そのものではありません。


  経営者からの指示に基づいて単に業務の一部を管理しているのではなく、経営者と一体的な立場において、経営方針に基づき、部門の方針の決定や予算の管理、部下の労働時間の管理などの業務を行っている。

  経営者と一体的な立場で職務を遂行する上で、経営方針に基づいて、部下の採用や配置、賃金その他労働条件の決定等を行う権限が与えられており、その結果に対する責任も担っている立場にある。

  経営者と一体的な立場で職務を遂行する上で、勤務の在り方に関して会社から何ら拘束を受けない。
就業規則上の所定始業時刻での出社が義務付けられず、上位者の許可なく出退勤の時刻を決められる等。

  責任のある職務を遂行し、残業代なども支払われない代わりに、一般の労働者と比較して相応に高い待遇を得ている。

労組法上の「使用者の利益を代表する者」とは、「部長」「課長」などの名称にとらわれず、その権限が労働組合員としての誠意と責任に抵触するかどうかで判断されます。
ある特定の管理職が「使用者の利益を代表する者」であるかどうかを判断するには、実質的に使用者の利益を代表する者かどうかで判断するので、「管理職」であることで労組法上の組合員から除外されることはありません。
労働基準法の規制を免れるためだけの「名ばかり管理職」は違法行為にあたる場合があります。






取得していますか?有給休暇

会社が有給休暇の取得を認めないことは違法となります。
労働基準法に基づく権利なので、正社員だけでなく労働者であれば取得することができます。
6か月間継続して勤務し、勤務が予定された日のうちの8割以上出勤した場合には、有給休暇が付与されます。
有給休暇日は労働者が指定することができますが、会社は事業の正常な運営に支障が出る場合に、他の日に変更するよう労働者に求めることができます。
有給休暇の取得理由は労働者の自由です。
会社は取得の目的に干渉してはならないことになっています。
また、有給休暇は付与されてから2年経つと権利が消滅します。




ありますか?労働条件通知書

労働契約は口約束をしただけでも有効です。
しかし、こういった契約はトラブルになりかねません。
裁判所や行政機関がトラブルを解決するための正確な判断をするため、会社は書面を労働者に交付しなければなりません。
つまり、会社側と労働者側の双方で保管することになります。
この義務に違反した雇い主には罰金が科せられます。
トラブルになったときの大事な証拠にもなりますので大切に保管しておきましょう。
労働条件の明示には以下の事項について記載する必要があります。
  契約期間
  更新の有無、更新がある場合はその基準
  仕事をする場所、仕事の内容
  始業・終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務をさせる場合の就業時転換に関する事項
  賃金の決定・計算・支払方法・締切り・支払時期
  解雇の事由を含む退職についての事項