変形労働時間制

労働時間の原則は1日8時間、1週40時間です。
しかし、業務量に波がある業種によっては使用者と労働者双方にとって効率が悪い場合があります。
このような場合、労使協定を締結し変形労働時間制を導入することで、効率的な労働時間の管理を行うことができるようになります。
例えば1か月単位の変形労働時間制の場合、暦の日数が28日では160.0時間、29日で165.7時間、30日で171.4時間、31日で177.1時間以内であれば、1週間で48時間(1日8時間×6日)という働き方も可能になります。
この法定労働時間の根拠は

暦の日数÷7日×40時間

の算定式によるもので、この時間を超える労働は変形期間の時間外労働(残業)となります。

36協定

労働基準法では原則1日の労働時間は8時間、1週間で40時間としています。
この法定労働時間を超える労働(残業)をさせる場合に必要になるのが「36協定」です。
「36協定」とは労働基準法36条に基づく労使協定であり、時間外・休日労働に関する協定届けを労働基準監督署長に届け出る必要があります。
36協定で定める延長時間にも限度があり、一般労働者の場合1週間で15時間、1か月で45時間等細かく設定されています。
さらに、この限度を超えて労働させる場合には特別条項付き36協定を結ぶ必要があります。
とはいえ36協定の上限を超えて残業を行う月は1年の半分を超えてはならず、特別な事情が予想される場合に限られ、具体的な理由が必要です。
一般的に1か月に限れば100時間、2か月連続の場合で80時間(1か月内)の「過労死ライン」(厚生労働省通達・脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準)が限度とされています。
ただし、1か月60時間を超える時間外労働については、法定割増賃金率が5割以上となるため、時間外労働を60時間以内とする企業が増えています。(中小企業においては平成34年4月1日まで猶予されています)

過半数を代表する者とは

労働基準法では事業所に過半数の労働者で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者に協定の締結や就業規則の作成、変更について判断する機会が与えられるとなっています。
労働者の過半数を代表する者は民主的な手続きにより選出されなければなりません。

・管理監督者ではないこと

・労働者に対し、選出の目的を明示して立候補、推薦を募っていること

・労働者に対し、選出の目的を明示して投票、挙手等の方法により選出が行われていること

・同意書の回覧や話し合い等も認められますが、電子メールを利用する場合も含め、その記録を保存しておくこと

電子メールを利用する場合においては、労働者の賛成か反対の明確な意志が必要なので、返信がなければ賛成という方法では、各労働者からの明確な意志表示を記録し保存しておくことができないため不適当と考えられます。
過半数を代表する者の選出は面倒ではありますが、適正に行っておくことが重要なのです。
また、過半数を代表する者への不利益取扱いも禁止されています。

ご存じですか?みなし残業

みなし残業と呼ばれる固定残業代は、人件費の抑制に利用されることがあります。
現行の賃金内に残業代を設定すれば、たとえ残業しても見かけ上の賃金は変わりません。
以下の点もふまえ、よく確認した上で雇用契約を結ぶ必要があります。

・時間外労働に対する割増賃金を定額で支払う場合には、残業を含まない労働時間に対する賃金と残業時間に対する割増賃金とが雇用契約上明確に区別されていなければなりません。

・固定残業代に対する時間を超えて残業した場合には、超過分を支払うことを労働者に明示し、また実労働時間が固定残業時間を含む時間を超えなくても、固定残業代を含む所定の賃金を支払う必要があります。

管理職と管理監督者

労働基準法でいう管理監督者は管理職そのものではありません。


  経営者からの指示に基づいて単に業務の一部を管理しているのではなく、経営者と一体的な立場において、経営方針に基づき、部門の方針の決定や予算の管理、部下の労働時間の管理などの業務を行っている。

  経営者と一体的な立場で職務を遂行する上で、経営方針に基づいて、部下の採用や配置、賃金その他労働条件の決定等を行う権限が与えられており、その結果に対する責任も担っている立場にある。

  経営者と一体的な立場で職務を遂行する上で、勤務の在り方に関して会社から何ら拘束を受けない。
就業規則上の所定始業時刻での出社が義務付けられず、上位者の許可なく出退勤の時刻を決められる等。

  責任のある職務を遂行し、残業代なども支払われない代わりに、一般の労働者と比較して相応に高い待遇を得ている。

労組法上の「使用者の利益を代表する者」とは、「部長」「課長」などの名称にとらわれず、その権限が労働組合員としての誠意と責任に抵触するかどうかで判断されます。
ある特定の管理職が「使用者の利益を代表する者」であるかどうかを判断するには、実質的に使用者の利益を代表する者かどうかで判断するので、「管理職」であることで労組法上の組合員から除外されることはありません。
労働基準法の規制を免れるためだけの「名ばかり管理職」は違法行為にあたる場合があります。






取得していますか?有給休暇

会社が有給休暇の取得を認めないことは違法となります。
労働基準法に基づく権利なので、正社員だけでなく労働者であれば取得することができます。
6か月間継続して勤務し、勤務が予定された日のうちの8割以上出勤した場合には、有給休暇が付与されます。
有給休暇日は労働者が指定することができますが、会社は事業の正常な運営に支障が出る場合に、他の日に変更するよう労働者に求めることができます。
有給休暇の取得理由は労働者の自由です。
会社は取得の目的に干渉してはならないことになっています。
また、有給休暇は付与されてから2年経つと権利が消滅します。




ありますか?労働条件通知書

労働契約は口約束をしただけでも有効です。
しかし、こういった契約はトラブルになりかねません。
裁判所や行政機関がトラブルを解決するための正確な判断をするため、会社は書面を労働者に交付しなければなりません。
つまり、会社側と労働者側の双方で保管することになります。
この義務に違反した雇い主には罰金が科せられます。
トラブルになったときの大事な証拠にもなりますので大切に保管しておきましょう。
労働条件の明示には以下の事項について記載する必要があります。
  契約期間
  更新の有無、更新がある場合はその基準
  仕事をする場所、仕事の内容
  始業・終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務をさせる場合の就業時転換に関する事項
  賃金の決定・計算・支払方法・締切り・支払時期
  解雇の事由を含む退職についての事項